説明が下手と言われる原因は、話し方の腕より文面に残った形

「説明が下手」と言われると、話し方や言葉選びの腕の問題だと考えがちです。けれど、聞き返される説明を一つずつ見ると、腕の差より先に、書いた人にだけ通じる形が文面に残っていることがよくあります。書いた本人には意味が通じているので、読み返しても気づけません。

大和ViSiON を運営する株式会社命では、担当が社長に出した説明が聞き返された回を、判断の記録に残しています。そこから、聞き返された言い方と、読む側が取り違えた事、直した言い方の形を並べます(社の実測 2026-11-05・株式会社命の判断の記録)。

社長に聞き返された言い方と、直した言い方の形
聞き返された言い方(記録した日)読む側が取り違えた事・欠けていた物直した言い方の形
「この方」とだけ書いた(2026-10-02)誰のことか指す相手を具体的な名前で書く
「録画が届いていません」(2026-10-25)録画が無いように読めた。実際は共有の置き場に在ったどこに在り、何が無いせいで見つけられないのかまで書く
出どころと範囲を言わずに出した入金の数字(2026-10-25)何の数字か。実際より少なく見えた数字は出どころと範囲を一緒に言う
内輪の呼び名「IDS」(2026-10-28)その呼び名が何を指すか中身の動きを一般の言葉で書く
「章の資料の欄に付けた PDF」(2026-11-04)どの画面のどこの話か。別の頁のことと取り違えた相手が見る画面の名前と、そこまでの道で言う

出典: 社の実測 2026-11-05(株式会社命の判断の記録から、言い方の形だけを抜き出した。「直した言い方の形」は記録に残った直し方を編集部がまとめた)

内輪の呼び名は、中身の動きに言い換える

2026-10-28、社長は「IDS という言い方はわからないので問題解決プロセスに」と言いました(社の実測 2026-11-05・株式会社命の判断の記録)。

IDS は社内で使っていた呼び名で、規則の紙や担当の手順に書かれていました。株式会社命はこれを「問題解決の流れ(本当の原因を見つける → 打てる手を 2〜3 並べて推奨を付ける → 社長が決める)」に言い換え、手順の中でも IDS という語を使わずに同じ動きをする形にしました(社の実測 2026-11-05・株式会社命の判断の記録)。

呼び名を別の呼び名に替えるのではなく、その呼び名で指していた動きを、初めて聞く人にも分かる言葉で書く。ここが直しの要です。

起きた事を取り違えさせる言い方は、在る所まで書く

2026-10-25、担当は「録画が(作業する機械に)届いていません」と書き、社長は「どういうこと?これって(共有の置き場に)保存されてるんじゃないの?」と聞き返しました(社の実測 2026-11-05・株式会社命の判断の記録)。

録画は共有の置き場に在り、担当の機械にその置き場の同期が入っていなかったので手元で見つけられなかった、というのが正しい言い方でした(同)。「届いていない」は、録画そのものが無いように読める書き方です。書いた人の手元から見た言い方は、読む人の側では別の出来事に読めます。

数字は、出どころと範囲を一緒に言う

同じ 2026-10-25、担当は年の目標の説明で、出どころと範囲を言わずに入金の数字を出し、社長は「これって何の数字を見ていってます?…もっとあるはずだけど」と聞き返しました(社の実測 2026-11-05・株式会社命の判断の記録)。

その数字は会社が記録した入金だけを足した物で、口座の入金の全部ではありませんでした(同)。以後、株式会社命では、数字は出どころと範囲を一緒に言う、としています。数字は正しくても、何を足した数字かが無いと、読む人は自分の知っている数字と比べて食い違いだけを受け取ります。

「この方」「あれ」は、指す物を名前で書く

2026-10-02、担当は答えを仰ぐ紙で、支払先を名前を出さずに「この方」と書き、社長は「この方って誰?具体的な名前をください」と返しました(社の実測 2026-11-05・株式会社命の判断の記録)。

書いている間は、前の段落の話の流れで誰のことか分かっています。けれど読む人は、別の仕事の合間に一枚だけを開きます。指す言葉は、指す物が同じ紙の中に名前で書かれていないと、読む人の側では空になります。

画面の話は、相手が見る画面の名前と道で言う

2026-11-04、担当は「章の資料の欄に付けた PDF」と書き、どの画面のどこかを示しませんでした(社の実測 2026-11-05・株式会社命の判断の記録)。

社長は「これなに…ここにあるやつ?どこのはなし?」と聞き返し、別の頁のことかと取り違えました(同)。次からは、相手が見る画面の名前と、そこまでの道(どの頁 › どこを開いた中の何か)で言う、としています。作った人の頭の中の地図と、見る人の画面は同じではありません。

二つとも聞き返されたら、「何の話か」から言い直す

2026-10-04 には、担当が出した二つの説明を、社長が二つとも聞き返しました(「これどういうことですか?…」「これどういうことかもう少し詳しく教えてください」)(社の実測 2026-11-05・株式会社命の判断の記録)。

このときは、会話の中で「何の話か」から説明し直しています(同)。上に挙げた形が一つの説明に重なると、読む人はどこから分からないのかも言えず、「どういうこと?」とだけ返すことになります。決めてもらう紙で「何の話か」をどこに置くかは、稟議書の書き方の頁で五つの欄として書いています。

わかりやすく伝えるには、話し方を磨くより送る前に確かめる

上の形は、どれも書いた本人が読み返して気づくのが難しい物です。だから直し方は「もっと上手に話す」より、「送る前に、決めた物に当てて確かめる」ほうが効きます。

株式会社命は、人へ送る文面を、専門の語の一覧(出さない語)に当てて、当たりが無いことを確かめてから送る決まりを置いています(社の実測 2026-11-05・株式会社命の判断の記録)。どの語を出さないか、言葉をどの高さから始めるかは行動指針の頁で書いています。ここでは、確かめの「順」を飛ばした記録を挙げます。

送る前の確かめの順を飛ばした記録
記録した日起きた事分かった事・直した事
2026-10-09窓口の担当が、送った後に確かめを当て、「コマンド」「パス」などの語に当たった送った文面を取り消す口は無かった。直しは「返事を送る前に、確かめを 1 回かける」
2026-10-14当たった語が、どれも相手が先に使った語だった機械の確かめは「相手が先に使った語」を見分けない
2026-10-31同じ型の 2 回目次から、送る前に当てる順に直した

出典: 社の実測 2026-11-05(株式会社命の判断の記録)

この記録から分かるのは二つです。一つは、確かめは送った後では遅いことです(社の実測 2026-11-05・株式会社命の判断の記録)。届いた文面は取り消せないので、確かめの意味は「送る前」にしかありません。

もう一つは、機械の確かめには見分けられない物があることです。2026-10-14 の回では、当たった語がどれも相手が先に使った語でした(社の実測 2026-11-05・株式会社命の判断の記録)。相手が自分で使った言葉なら、そのまま返しても通じます。語の一覧に当てる確かめは、送る前の最低の線として置き、相手がどの言葉を使っていたかは、読む側の目で見る必要があります。

説明を足すほどわかりにくくなる時

「わかりにくい」と言われると、説明を足したくなります。けれど、足すほど読みにくくなる場面があります。

2026-09-10、会社の管理画面の作りについて、社長は「余計な解説文章は全部いらない。説明があると読みづらい」と言いました(社の実測 2026-11-05・株式会社命の判断の記録)。

このとき決まりにしたのは「説明文を置かない。要る物は短い 1 行の手がかりへ」「説明を書きたくなったら、書かずに済む形に画面の方を直す」の二つです(社の実測 2026-11-05・株式会社命の判断の記録)。説明文は、画面が自分で説明できていないことの告白だ、という考えです。

ただし、取り消せない操作・お金・許可に関わる警告は消しません(同)。それは説明ではなく、通る前に立ち止まらせる門だからです。

言葉の説明でも同じことが言えます。言い訳や前置きを足す前に、呼び名を中身の言葉に替える、指す物を名前で書く、数字に出どころを付ける、といった形の直しで、足す説明そのものが要らなくなることがあります。

送る前に自分の説明へ当てる問い

ここまでの記録を、送る前に自分の文面へ当てる問いにまとめます(編集部のまとめ)。

  • 社内や自分の中だけの呼び名が残っていないか。残っているなら、その呼び名が指す動きを一般の言葉で書いたか
  • 起きた事を、自分の手元から見た言い方で書いていないか。読む人の側で別の出来事に読めないか
  • 数字に、何を足した数字か(出どころと範囲)を添えたか
  • 「この方」「あれ」「例の件」が、同じ文面の中の名前を指しているか
  • 画面や資料の話なら、相手が見る画面の名前と、そこまでの道を書いたか
  • 説明を足す前に、説明が要らない形に物の方を直せないか

部下や外注、AI から上がってくる説明が分からないときも、同じ問いがそのまま使えます。聞き返すたびに、どの形が欠けていたかを残しておくと、次に何を直してもらえばよいかを短い言葉で返せます。判断を任せていく経営の全体はAI 経営とはで書いています。

よくある質問

説明が下手と言われる原因は何ですか

話し方の腕より、書いた人にだけ通じる形が文面に残っていることが多いです。内輪の呼び名、起きた事を取り違えさせる言い方、出どころの無い数字、指す物の無い「この方」、画面の上の場所の無い言い方が、聞き返される説明によく見られる形です。

わかりやすく伝えるには、何から直せばよいですか

送る前に確かめる順を決めることからです。届いた文面は取り消せないので、確かめは送る前に置きます。そのうえで、呼び名を中身の言葉に替え、指す物を名前で書き、数字には出どころと範囲を添えます。

説明を詳しく足せば、わかりやすくなりますか

足すほど読みにくくなることがあります。説明を書きたくなったら、書かずに済む形に物の方を直せないかを先に考えます。ただし、取り消せない操作やお金、許可に関わる警告は残します。

部下や AI の説明が分からない時、どうすればよいですか

何の話かから言い直してもらい、どの形が欠けていたかを記録しておきます。欠けていた形が分かれば、「名前で書いて」「何の数字かを添えて」と、直してほしい所を短く返せます。

出典

  • 株式会社命の判断の記録(聞き返された説明・送る前の確かめ・管理画面の説明文の決まり・2026-09-10〜2026-11-04・社の実測 2026-11-05)