指示待ちを「性格」として扱うと、社長が指示を出し続けることになる

指示待ちの部下や社員に困っている社長の多くは、声のかけ方や本人のやる気を変えようとします。けれども、性格の問題として扱っている限り、直るまでの間は社長が全部の指示を出すしかありません。社長が疲れているのは、部下が動かないからというより、動いてよい範囲と、動いた後に何をするかが決まっていないからです。

この頁では、指示待ちを人の性格ではなく、会社の決まりの問題として扱います。言われなくても動ける人は、生まれつきそうなのではなく、「何を見たら、何をしてよいか」「どこで止まってよいか」が手元にある人です。

運営会社が全員の作法にした一文 — 「言われなくてもこなせる状態を作る」

大和ViSiON を運営する株式会社命では、会社の仕事の多くを AI エージェントが担っています。AI エージェントも、放っておけば言われた事だけをこなす「指示待ち」になります。そこで運営会社は、規則の紙に次の一文を置きました。「言われたことをこなすのではなく、言われなくてもこなせる状態を作る」。人が手でやっているのを見たら、それを消す提案をする。見て見ぬふりをしない、という決まりです(株式会社命の規則の紙・社の実測 2026-10-29)。

この一文は、もともと別の形で出された案から生まれています。「ヒアリング(聞き取り)の工程を作る」という案に対して、社長は「これはいらないかな」と退け、代わりにこの作法を全員の常の作法として置きました(株式会社命の判断の記録・社の実測 2026-09-19)。聞き取りの工程を足すと、指示を待つ場所が一つ増えるだけです。聞かれる前に、見た物から提案を出すほうを決まりにしたのです。

決めた社長自身にも実例があります。銀行とのつなぎ口と、カードの会社を、連携が楽な物に替えています(株式会社命の判断の記録・社の実測 2026-09-19)。作法を決めた本人が、先に自分の手を消す側に回っています。

見た物と、出す提案の表

「人が手でやっているのを見たら、消す提案をする」と言っても、何を見たら何を言えばよいかが無いと、人は動けません。運営会社の規則の紙には、見た物と出す提案が対で書いてあります。

見た物 → 出す提案(株式会社命の規則の紙より)
見た物(人が手でやっている事)出す提案消える手間
毎回エクセルを貼り付けてくる「繋げば、貼り付けずに読めます」貼り付けて渡す手
会計ソフトに手で入力している「自動で取ってこれるものに替えられます」手で打ち込む手
銀行の残高を画面で見ている「口座のデータを直接読む契約が在ります」画面を開いて見に行く手
カードの明細を手で集めている「連携が楽な会社に替えると、自動で入ります」明細を集める手

出典: 株式会社命の規則の紙(見た物→出す提案の表・社の実測 2026-10-29)。「消える手間」の列は大和ViSiON 編集部がまとめたもの

表の左の列は、どれも指示を待っている部下が毎日目にしている物です。指示待ちの人に足りないのは気づく力ではなく、気づいた後に言ってよい一言のほうです。この表を職場ごとに作っておくと、「見た物」が出てきた時点で、言われなくても次の一手が決まります。

「気をつける」で閉じない — 同じ手助けが二回要ったら、消す変更を書く

提案を出すきっかけは、思いつきに任せていません。運営会社では、仕事の記録に「手が要った」(人の手を借りた)という種別を付けています。同じ型の「手が要った」が二件出たら、その型を消す道具・つなぎ口・契約の変更を起草します(株式会社命の規則の紙・社の実測 2026-10-29)。

大事なのは、終わり方を「次から気をつけます」にしないことです。気をつけるという約束は、次も同じ手助けが要ることを前提にしています。同じ手助けが二回要ったら、三回目が要らなくなる変更を書いて上げる。測り方をこう決めておくと、部下が自分から動く理由が、やる気ではなく数え方の側に生まれます。

原因を人ではなく「無かった仕組み」で書く書き方は再発防止策とはにまとめています。

「勝手にやる」と「指示を待つ」の間の線

言われなくても動けと言われた部下が一番困るのは、どこまでやったら「勝手にやった」と叱られるのかが分からないことです。運営会社はこの線を、お金と契約の所に引いています。契約の変更と課金は社長が決めます。担当の仕事は「この型を消すには〇〇が要る。月にいくらかかる。人の手番が年に何回消える」まで書いて上げることです(株式会社命の規則の紙・社の実測 2026-10-29)。

つまり、担当は調べる・比べる・書くまでを、指示を待たずにやります。決めるのは社長で、社長は書いて上がってきた物に「はい」か「いいえ」を返すだけで済みます。決める所は渡さず、決めるための材料を揃える所を渡すのが、指示待ちでも勝手でもない動き方です。どの判断から渡していくかの順番は権限委譲とはに書いています。

動く側の作法 — 「確かめられません」で止めて上に投げない

指示待ちが一番よく出るのは、自分では分からない事に当たった時です。運営会社でも、画面でしか分からない事を「社長にログインしていただけますか」と頼んで止めるか、自分で確かめに行くかが問われたことがあります。社長の答えは「むしろ逆のポリシーにして。積極的に確かめに行く」でした(株式会社命の判断の記録・社の実測 2026-08-06)。

この日から、運営会社の既定の動きは「確かめる」になっています。「確認できません」で止めて社長に投げるのは怠慢とし、社長の手番を増やしてよいのは、自分で試して駄目だった時だけです。自分でログインして確かめた時は、事後に「どのアカウントで入ったか」を一行で報告します。締め出された時に、原因が分かるようにするためです(株式会社命の判断の記録・社の実測 2026-08-06)。

  • まず自分で確かめる。上に聞く前に、自分で入れる所・調べられる所を当たる
  • 駄目だった時だけ頼む。頼む時は、何を試して何が駄目だったかを添える
  • 入った事は事後に一行で知らせる。先に許しを取るのではなく、後から追える形にしておく

止まる理由を増やさない — 止めてよいのは「外へ出る経路があるとき」だけ

動く側の作法を決めても、注意書きが多い職場では人は止まります。運営会社にも例があります。担当が、画面にパスワードが見えてしまったことを理由に「ログインしません」と止めました。社長は「人間がログインするときだってパスワード見れるんだから」と答え、見えることを理由に止めない・断らない、と決めました(株式会社命の判断の記録・社の実測 2026-09-17)。

そのうえで、止めてよい唯一の条件を外へ出る経路があるときに絞っています。配る物、公開の頁、他社の場所、外のサービスへの送信、共有の保存先のように、中の物が外へ出ていく所だけです。そして、この線を止まる理由を足す注意書きで増やさない、とも決めています。注意書きがあると「見えるかもしれないので触りません」になるからです(株式会社命の判断の記録・社の実測 2026-09-17)。

部下が指示を待つ職場には、たいてい「念のため確認してから」「迷ったら聞くこと」という注意書きが積もっています。一つ一つは正しくても、足すたびに止まってよい理由が増えます。止めてよい条件を短く一つにして、それ以外は動いてよいと書くほうが、言われなくても動ける人は増えます。

人の部下にも使える、指示待ちを直す手順

運営会社が AI エージェントに入れている作法は、人の部下にもそのまま使えます。手順にすると次のとおりです。

  1. 「見た物 → 出す提案」の表を作る。職場で人が手でやっている作業を挙げ、それを見たら何を提案してよいかを一行ずつ書く
  2. 「手が要った」を記録する。人の手を借りた時は、その型を一行で残す
  3. 同じ型が二回出たら、消す変更を書かせる。「気をつけます」で閉じず、道具・つなぎ口・契約の何を変えれば消えるかを起草する
  4. 決める所と書く所を分ける。契約とお金は社長が決める。担当は、何が要り、いくらかかり、手番が何回消えるかまでを書いて上げる
  5. 既定の動きを「確かめる」にする。確かめられないで止めて上に投げず、まず自分で確かめ、駄目だった時だけ頼む。入った事は事後に一行で知らせる
  6. 止めてよい条件を一つに絞る。外へ出る経路があるときだけ止める。注意書きを足して止まる理由を増やさない

相手が見えない時にどう振る舞うかの既定の決め方は行動指針とはに、社長の判断を引ける相手を人より先に置く考え方は社長の右腕とはにまとめています。こうした決まりが揃った先にある会社の形は社長がいなくても回る会社の条件で扱っています。

よくある質問

指示待ち人間とはどんな人ですか

言われた仕事はこなすものの、指示が無いと自分から次の仕事に動かない人のことです。多くの場合、本人の性格よりも、何を見たら何をしてよいか、どこで止まってよいかが決まっていないことが原因になっています。

指示待ちの部下や社員は、どうすれば改善しますか

声かけを変える前に、「見た物 → 出す提案」の対を職場ごとに書き出します。人が手でやっている作業を見たら、それを消す提案をしてよい、と決まっていれば、指示が無くても次の一手が決まります。

部下が勝手に動きすぎるのが心配です。どこで線を引けばよいですか

決める所は渡さず、決めるための材料を揃える所を渡します。運営会社では、契約の変更と課金は社長が決め、担当は「何が要り、いくらかかり、人の手番が何回消えるか」まで書いて上げると決めています(株式会社命の規則の紙・社の実測 2026-10-29)。

部下が「確認できないので止めています」と言ってきます。どうすればよいですか

既定の動きを「まず自分で確かめる」に変えます。運営会社では、確認できないで止めて上に投げるのをやめ、自分で試して駄目だった時だけ頼み、入った事は事後に一行で報告する形にしました(株式会社命の判断の記録・社の実測 2026-08-06)。

注意書きやルールを増やすと、指示待ちは減りますか

減らないことが多いです。注意書きは止まってよい理由を増やすからです。運営会社では、止めてよい条件を「外へ出る経路があるとき」だけに絞り、この線を注意書きで増やさないと決めています(株式会社命の判断の記録・社の実測 2026-09-17)。

出典

  • 株式会社命の規則の紙(言われたことをこなすのではなく、言われなくてもこなせる状態を作る。見た物→出す提案の表。「手が要った」が同じ型で二件出たら消す変更を起草する。契約の変更と課金は社長が決め、担当は要る物・かかる額・消える手番まで書いて上げる・社の実測 2026-10-29)
  • 株式会社命の判断の記録(聞き取りの工程を作る案を社長が退け、代わりに全員の常の作法として置いた。銀行のつなぎ口とカードの会社を連携が楽な物に替えた社長の実例・社の実測 2026-09-19)
  • 株式会社命の判断の記録(画面でしか分からない事は、社長に頼まず自分で確かめに行くのを既定にし、入った事は事後に一行で報告する・社の実測 2026-08-06)
  • 株式会社命の判断の記録(画面にパスワードが見えたことを理由に止めない。止めてよいのは外へ出る経路があるときだけで、注意書きで止まる理由を増やさない・社の実測 2026-09-17)