「注意します」が再発防止策にならない理由

再発防止策を調べている人の多くは、始末書や報告書の欄を埋める場面にいます。社員か外注先か、仕事を任せている AI がミスをして、「今後は注意を徹底します」「確認を二重にします」「手順書を作ります」と書きかけている。そういう場面です。

この書き方の困った所は、同じ条件がそろえば、同じミスがもう一度起きることです。注意は人が替われば消えますし、同じ人でも忙しい日には抜けます。確認を増やしても、確認する物が間違っていれば、ミスはそのまま素通りします。

再発防止策で書くべきなのは、心がけではなく、ミスが通り抜けた穴がどこにあり、それをどうふさいだかです。人を責める文は、読む側の気が済むだけで、穴は残ります。

書き方の型 — 症状・原因・正しいやり方の三段

大和ViSiON を運営する株式会社命では、仕事を任せている AI の担当が踏んだミスを、一件ずつ「症状・原因・正しいやり方」の三段で書き、仕事の前に必ず読む表に入れています(株式会社命の判断の記録・社の実測 2026-09-11・2026-09-12)。この三段は、そのまま報告書の再発防止策の書き方になります。

  • 症状 — 何が起きたか。外から見えた事実だけを書く(例: 直したはずの条件が素通りした)
  • 原因 — なぜ通り抜けたか。「誰が不注意だったか」ではなく、「どの仕組みが無かったか」を書く
  • 正しいやり方 — 次に同じ場面に来た人が、そのまま手を動かせる形で書く。「気をつける」は書かない

下の表は、運営会社が実際に書いた行を、一般の言葉に直したものです。再発防止策の例文として、そのまま型に使えます。ミスの場面ごとの再発防止策の具体例として読んでください。

再発防止策の例文(症状・原因・正しいやり方の三段・株式会社命の実例)
症状原因正しいやり方(再発防止策)
直したはずの条件が、別の入り口から素通りした同じ判定を通る道が二本あったのに、一本だけ直した。本道が残っていた判定を変えるときは、その判定を呼んでいる所を全部書き出し、道ごとに「直ったか」を試す
中身の無い物まで「済み」と出た同じ出どころから出た二つの数を突き合わせていた。構造上、必ず通る確かめ方だった確かめ方を作ったら、一度わざと落として落ちることを見る。突き合わせる片側は別の出どころから取る
「見つからない」「0 件」を真に受けて、誤った結論を出した測る道具が 0 を返したとき、相手ではなく自分の調べ方を疑わなかった0 件や失敗の表示を見たら、まず「この調べ方でこの答えが出る当たり前の条件」を一つ挙げてから結論する。件数を報告するときは、何を数えたかを単位で書く

出典: 株式会社命の判断の記録(仕事の前に読む「踏むと壊れる物」の表の行・社の実測 2026-09-11・2026-09-12)。言い回しは大和ViSiON 編集部が一般の言葉に直したもの

直す前に、同じミスが通る道を全部書き出す

表の一行目は、作業ミスの再発防止策でいちばん起きやすい失敗です。運営会社では、ある条件の判定を直すとき、片方の入り口だけを直して、実際に使われている本道を直さずに残したことがあります(株式会社命の判断の記録・社の実測 2026-09-11)。

直した本人は「直した」と思っています。けれど、同じ判定を通る道は一本ではありませんでした。再発防止策を打つ前に、そのミスが通りうる道を全部書き出す。これを飛ばすと、報告書には「対策済み」と書かれたまま、同じミスが別の道から起きます。

人の仕事でも同じです。請求書の宛名の誤りを直すなら、手で作る請求書だけでなく、写して作る請求書、自動で出る請求書のどこを通っても同じ誤りが起きないかを見ます。

確かめ方は、わざと一度落として試す

表の二行目は、「チェックを増やす」型の再発防止策が効かない理由そのものです。運営会社では、出来上がりを確かめる仕組みが、同じ出どころから出た二つの数を比べていたため、中身の無い物まで「済み」と通していました(株式会社命の判断の記録・社の実測 2026-09-12)。

そこで決めた正しいやり方は、確かめ方を作ったら、必ず一度わざと落とす。落ちなければ、それは確かめ方ではない、というものです(株式会社命の判断の記録・社の実測 2026-09-12)。全部通ったことは、確かめ方が働いた証拠になりません。

ダブルチェックを再発防止策に書くなら、二人目が一人目と同じ資料を見ていないか、間違いを混ぜた見本を渡したときに二人目が本当に気づくかまで試しておきます。

原因の欄には「無かった仕組み」を書く

三段のうち、いちばん書き方を間違えやすいのが原因の欄です。運営会社の規則の紙では、失敗・つまずき・人の手が要った場面は、一件起きただけで記録して上に上げ、その行に五つの仕組みのどれが無かったかを書く欄を設けています(株式会社命の規則の紙・社の実測 2026-10-28)。二つに見えたときは、決めた順で先の方を一つ選びます(株式会社命の規則の紙・社の実測 2026-10-28)。

原因を人ではなく無かった仕組みに置く。これが、この頁で勧める再発防止策の考え方の芯です。五つを一般の言葉に直すと、次のとおりです。

原因の欄に書く「無かった仕組み」の五つと、効く再発防止策の向き
無かった仕組みどんなミスで当たるか再発防止策の向き
記憶(覚え書きの置き場)前に決めた事を知らずに、逆の事をした決めた事を、仕事の前に必ず読む場所に書く
道具のつなぎ手で写した・貼り付けた所で誤った手で運ばずに済むよう、道具同士をつなぐ
手順やり方を知らない人が、自己流でやった次の人がそのまま手を動かせる手順にする
判断決めてよいかが分からず、止まった・勝手に決めた誰が何を決めてよいかの線を書く
定期の仕事誰も見ていない間に、ずれが溜まった決まった時刻に見回る仕事を置く

出典: 株式会社命の規則の紙(失敗・つまずき・手が要った場面の記録の「どの仕組みが無かったか」の欄・社の実測 2026-10-28)。名前と例は大和ViSiON 編集部が一般の言葉に直したもの

原因を「担当者の確認不足」と書くと、打てる手は「よく確認する」しか残りません。「仕事の前に読む場所に、前の決め事が無かった」と書けば、打つ手はその場所に書くことだと決まります。原因の書き方で、再発防止策の質が決まります。

どれから直すか — 回数ではなく、壊れる物と減らせるかで選ぶ

再発防止策の候補は、たいてい直せる手より多く出ます。運営会社では、何度も起きたミスの候補を前に、「何度も起きたから直す」は理由にならない、と社長が退けました(株式会社命の判断の記録・社の実測 2026-09-20)。回数は「捨てずに見よ」の合図であって、「直せ」の合図ではない、という整理です。

代わりに使った物差しは二つです(株式会社命の判断の記録・社の実測 2026-09-20)。

  1. 放っておくと何が壊れるか。他の担当の物が自分の保存に混ざって本番の元へ届いた、確かめる仕組みが「検査していない」を「異常なし」の顔で返した、といった物は重い。紙の一行がずれている、担当が手で撃ち直せば済む、といった物は軽い
  2. 直し方が仕組みを減らすか、増やすか。写しを消す、許す物を並べる形から禁じる物を並べる形に反転する、誰でも書ける共有の作業場所を無くす、は「減らす」直し方。手順に一段足す、本文に注意書きを足す、は「増やす」直し方

この二つで候補を見直し、直す物・記録に回すだけの物・退ける物・他とまとめる物に分けて、直す物を絞りました(株式会社命の判断の記録・社の実測 2026-09-20)。再発防止策を足し続けると、手順と確かめ方が増えて、それ自体が次のミスの元になります。減らす形で直せる物から手を付けるのは、そのためです。

書いた再発防止策は、仕事の前に読む場所に置き、読み戻す

報告書に書いて提出したところで終わると、再発防止策は棚の中で眠ります。運営会社の置き場の決まりでは、仕事の「やり方」と「踏むと壊れる物」を分けて置き、直した人は直したら読み戻して、書いた通りになっているかを突き合わせることになっています(株式会社命の規則の紙・社の実測 2026-10-28)。

やり方と壊れる物を分けておくと、仕事の前に「これだけは踏むな」を短く読めます。読み戻して突き合わせるのは、書いたつもりで書けていない、を防ぐためです。

出てきた課題を一覧にして、決めた手を期限つきで回す形は課題管理とはに、決まりの紙と実物がずれたときの直し方は社内ルールの直し方にまとめています。

再発防止策を書く手順

  1. 症状を、外から見えた事実だけで書く。誰が悪いかは書かない
  2. 同じミスが通る道を全部書き出す。直すのは一つの入り口ではなく、全部の道
  3. 原因の欄に、無かった仕組みを一つ書く。記憶・道具のつなぎ・手順・判断・定期の仕事のどれか
  4. 正しいやり方を、次の人がそのまま動ける形で書く。確かめ方を足すなら、わざと一度落として試す
  5. どれから直すかは、壊れる物と、減らす直し方かで選ぶ。回数だけでは決めない
  6. 仕事の前に読む場所に置き、読み戻して突き合わせる。

ミスの原因を人ではなく仕組みに置けると、仕事を人や AI に任せても、同じ穴に二度落ちません。社長がいなくても回る会社の条件は社長がいなくても回る会社の 5 つの条件に、判断まで任せる仕組みの作り方は仕組み化とはに書いています。

よくある質問

再発防止策とは何ですか

起きたミスが同じ形でもう一度起きないように、ミスが通り抜けた仕組みの穴をふさぐ手立てのことです。その場の後始末(応急の処置)とは別に、次に同じ条件がそろっても同じ結果にならない形を作ります。

再発防止策の書き方の基本は何ですか

症状・原因・正しいやり方の三段で、一件ずつ書きます。原因の欄には人の不注意ではなく、記憶・道具のつなぎ・手順・判断・定期の仕事のうち、どの仕組みが無かったかを書きます。

「注意を徹底する」は再発防止策になりますか

なりません。注意は人が替われば消え、同じ人でも忙しい日には抜けます。気をつけるで閉じず、ミスが通った道をふさぐか、ミスが起きたら必ず落ちる確かめ方を置きます。

同じミスが何度も起きたら、必ず再発防止策を打つべきですか

回数だけでは決めません。放っておくと何が壊れるかと、直し方が仕組みを減らす形か増やす形かで決めます。運営会社では、何度も起きたから直すという理由を社長が退け、この二つで候補を絞りました(株式会社命の判断の記録・社の実測 2026-09-20)。

再発防止策は、どこに書いておけばよいですか

仕事の前に必ず読む場所に書きます。運営会社では、仕事のやり方と、踏むと壊れる物を分けて置き、直したら読み戻して書いた通りになっているかを突き合わせています(株式会社命の規則の紙・社の実測 2026-10-28)。

出典

  • 株式会社命の判断の記録(何度も起きたから直すという理由を社長が退け、放っておくと何が壊れるかと、直し方が減らす形か増やす形かで候補を絞った・社の実測 2026-09-20)
  • 株式会社命の判断の記録(同じ判定を通る道が二本あったのに一本だけ直し、本道が残った。判定の呼び出し元を全部書き出し、道ごとに試すことにした・社の実測 2026-09-11)
  • 株式会社命の判断の記録(同じ出どころの二つの数を突き合わせる確かめ方は必ず通る。確かめ方は一度わざと落とし、片側は別の出どころから取ることにした・社の実測 2026-09-12)
  • 株式会社命の判断の記録(0 件や失敗の表示を真に受けて結論した。まず当たり前の条件を一つ挙げてから結論し、件数は何を数えたかを単位で書くことにした・社の実測 2026-09-11)
  • 株式会社命の規則の紙(失敗・つまずき・手が要った場面は一件で記録し、五つの仕組みのどれが無かったかを書く/やり方と踏むと壊れる物を分けて置き、直したら読み戻して突き合わせる・社の実測 2026-10-28)