制約理論の芯は「一番弱い輪」の話

改善をいくつも打っているのに、売上や成果が伸びない。そんな時に疑いたいのは、手の数ではなく、手を打った場所です。制約理論(TOC)は、鎖のたとえで説明されます。鎖の強さは一番弱い輪で決まり、その輪以外を強くしても時間と労力の無駄になる、という考え方です(TOC Institute https://www.tocinstitute.org/five-focusing-steps.html ・取得 2026-10-25)。

「ボトルネックを解消しろ」という言い方も同じ意味です。流れの中で一番細い所が、全体の量を決めています。細くない所をいくら太くしても、細い所を通れる量は変わりません。

解説の多くは工場の生産の話として書かれています。この頁では、大和ViSiON を運営する株式会社命が、同じ考え方を工場の外、つまり検索からお客様が来るまでの道と、縦動画の運営に当てた記録を示します。

5 段の手順を、お客様が来るまでの道に置き換える

制約理論の手順は 5 段です。①制約を見つける、②制約を使い切る、③他を全部制約に従わせる、④制約を太くする、⑤惰性が次の制約にならないようにする(繰り返す)(TOC Institute https://www.tocinstitute.org/five-focusing-steps.html ・取得 2026-10-25)。運営会社の集客の道では、それぞれ次のように当てています。

制約理論の 5 段と、運営会社の集客の道での当て方
制約理論の段集客の道での当て方
①制約を見つける道を「載る → 順位 → 表示 → クリック率 → 訪問 → 登録」の段に並べ、段ごとに線を置き、線に対する割合が一番低い段を、その週の「一番細い段」として一つだけ選ぶ
②制約を使い切る直すのは、選んだ一番細い段だけにする
③他を全部制約に従わせる担当の物差しも、一番細い段の率を一本だけにする
④制約を太くする一番細い段についての仮説を立てて試す。外れた手は外れとして閉じる
⑤惰性が次の制約にならないようにする段が線を越えたら、診断が次に細い段を名指す。新しい段の仮説を立て直し、物差しも替える

出典: TOC Institute(https://www.tocinstitute.org/five-focusing-steps.html ・取得 2026-10-25)と株式会社命の判断の記録(社の実測 2026-10-25・2026-10-28)。表の言い回しは大和ViSiON 編集部がまとめたもの

道を段に並べ、段ごとに「線」を置く

運営会社は、検索からお客様が来るまでの道を段に分けて並べました。載る(Google に知られる)→ 順位 → 表示 → クリック率 → 訪問 → 登録、の順です。段ごとに「線」(ここまであれば足りているという目安)を置き、線に対する割合が一番低い段を、その週の「一番細い段」として一つだけ選びます。直すのはその段だけです(株式会社命の判断の記録・社の実測 2026-10-25)。

線は全部仮説です。最初から正しい線は引けないので、実測を見て見直す日に直します(株式会社命の判断の記録・社の実測 2026-10-25)。線が仮であっても、段を並べて比べること自体はできます。どの段も同じ物差しで「線に対して何割か」を見るので、性質の違う段どうしを並べて、一番細い所を一つに決められます。

もう一つの決まりがあります。数字が撃てない段は「測れない」として選ばない。直しても、効いたかどうかを読めないからです(株式会社命の判断の記録・社の実測 2026-10-25)。

最初の診断 — 一番細いのは「表示」だった

28 日分の数字で最初の診断をすると、運営する 3 つのサイトとも、一番細い段は「表示」でした。登録の段は 3 つのサイトとも測れませんでした。記事から登録までを数える口が無かったためです(株式会社命の判断の記録・社の実測 2026-10-25)。

同じ日の調べでは、目標とする週の登録に届くには、検索から来たクリックのうち 46% が登録する必要がありました(株式会社命の判断の記録・社の実測 2026-10-25)。これは、記事の書き方を 1 か所直して届く距離ではありません。詰まりは書き方ではなく、載る・表示の量と、登録を数える口が無いことにありました。

ここが制約理論の効きどころです。成果が出ないと、まず手元で直せる所、たとえば記事の書き方を直したくなります。けれども一番細いのが表示なら、書き方を磨いても、通れる量は表示で決まったままです。段を並べて比べたことで、手を打つ場所を書き方から表示へ移せました。

外れた手は、外れとして閉じる

最初の診断では、住所の末尾の「/」の有る無しで、1 つの頁の数字が 2 つに割れているのが見つかりました。これを 1 つに寄せれば表示が増えるのではないか、という仮説を試しましたが、寄せても表示は動かず、外れとして閉じました(株式会社命の判断の記録・社の実測 2026-10-25)。

一番細い段を選んでも、そこに打つ手が当たるとは限りません。大事なのは、外れた手をいつまでも続けず、閉じて次の仮説へ移ることです。判定の基準を先に決めておく試し方は仮説検証とはにまとめています。

縦動画の運営にも同じやり方を当てた

運営会社は、同じやり方を縦動画の運営にも当てました。段を並べて線に対する割合を比べると、一番細い段は「合図の言葉に反応した率」で、線の 0.12 倍でした。測れない段(メール)は選びませんでした(株式会社命の判断の記録・社の実測 2026-10-26)。

検索の道と縦動画の道では、段の名前も数字の取り方も違います。それでも「段に並べる・線を置く・線に対して一番細い段を一つ選ぶ・測れない段は選ばない」という手順はそのまま使えました。制約理論がいう制約は、工場の機械に限らず、お客様が通る道のどこにでも在ります。

担当の物差しは、一番細い段の率を一本だけ

一番細い段を選んだら、担当が持つ物差しもそこへそろえます。運営会社の決め方は次のとおりです(株式会社命の判断の記録・社の実測 2026-10-28)。

  • 会社の目標の数は担当に渡す。担当はそれを受けて、一番細い段の率を一本だけ、自分の物差しとして決めて表に入れる
  • 正しいと分かるまでは変えてよい。一番細い段が替われば、物差しも替える。社長の言葉は「KPI が正しいと分かるまでの間はころころ変わってもいい」
  • 量は下限、品質は門。量は割った時だけ知らせる。品質は物差しにせず、通す門として置く。社長の言葉は「量が品質ゲートになりそうならそうすればいいし、そうでないならしなくていい」
  • 週 1 回の経営の会では、その物差しが動いたかを見る。

物差しを一本にするのは、制約理論の 3 段目「他を全部制約に従わせる」を、人の動きに当てたものです。担当が全部の段の数字を追うと、手は細くない段にも散ります。一番細い段の率だけを見ていれば、打つ手もそこに集まります。KPI の決め方そのものはKPI 設定とはに書いています。

自分の会社で、制約理論を当てる手順

運営会社のやり方を、始める順に並べると次のとおりです。

  1. 成果までの道を段に並べる。お客様が知る所から申し込む所まで、通る順に書き出す
  2. 段ごとに線を置く。ここまであれば足りているという目安を仮に決める。線は仮説なので、見直す日を決めておく
  3. 測れない段を外す。数字が取れない段は、直しても効いたか読めないので選ばない。数える口を作ること自体を手にする
  4. 線に対して一番細い段を一つだけ選ぶ。その週に直すのはその段だけにする
  5. 担当の物差しを、その段の率一本にする。量は下限、品質は門として別に置く
  6. 段が線を越えたら、次の段へ移る。前の段の手を惰性で続けず、新しい段の仮説を立て直す

どの段が細いかを社長が毎回勘で決めるのではなく、道と線と物差しが紙に在れば、担当が自分で次の手を選べます。仕事を流れとして書き出す所は業務棚卸しのやり方が、決めた事を人に任せられる形にする所は仕組み化とはが近い話です。全体像は社長がいなくても回る会社の 5 つの条件にまとめています。

よくある質問

制約理論とは何ですか

仕事の流れの中で一番細い所(制約)を見つけ、そこだけを直して全体の成果を増やす考え方です。鎖の一番弱い輪以外を強くしても時間と労力の無駄になる、というたとえで説明されます(TOC Institute https://www.tocinstitute.org/five-focusing-steps.html ・取得 2026-10-25)。

制約理論の 5 段の手順とは何ですか

①制約を見つける、②制約を使い切る、③他を全部制約に従わせる、④制約を太くする、⑤惰性が次の制約にならないようにする(繰り返す)の 5 段です(TOC Institute https://www.tocinstitute.org/five-focusing-steps.html ・取得 2026-10-25)。最後の段で最初に戻り、次に細い所を探します。

ボトルネック分析は、工場以外でも使えますか

使えます。運営会社は、検索からお客様が来るまでの道を「載る → 順位 → 表示 → クリック率 → 訪問 → 登録」の段に並べ、線に対する割合が一番低い段を一つだけ選んで直しています。最初の診断では、3 つのサイトとも一番細いのは「表示」でした(株式会社命の判断の記録・社の実測 2026-10-25)。

ボトルネック解消で、どこから手を付ければよいか分かりません

段ごとに線(足りているという目安)を置き、線に対して一番低い段を一つだけ選びます。数字が取れない段は、直しても効いたか読めないので選びません(株式会社命の判断の記録・社の実測 2026-10-25)。

担当者の目標は、どう置けばよいですか

会社の目標の数は担当に渡し、担当は一番細い段の率を一本だけ自分の物差しにします。正しいと分かるまでは変えてよく、量は下限、品質は門として別に置きます(株式会社命の判断の記録・社の実測 2026-10-28)。

出典

  • TOC Institute「Five Focusing Steps」(制約理論の 5 段の手順と、鎖の一番弱い輪のたとえ) https://www.tocinstitute.org/five-focusing-steps.html (取得 2026-10-25)
  • 株式会社命の判断の記録(検索からお客様が来るまでの道を段に並べ、段ごとに線を置き、線に対して一番細い段を一つだけ選んで直す。線は仮説。測れない段は選ばない・社の実測 2026-10-25)
  • 株式会社命の判断の記録(28 日分の最初の診断で、3 つのサイトとも一番細い段は表示。登録の段は測れなかった。目標に届くにはクリックのうち 46% の登録が要った。住所の末尾の「/」で割れた数字を寄せる仮説は外れとして閉じた・社の実測 2026-10-25)
  • 株式会社命の判断の記録(縦動画の運営で、一番細い段は合図の言葉に反応した率で、線の 0.12 倍。測れない段は選ばなかった・社の実測 2026-10-26)
  • 株式会社命の判断の記録(担当の物差しは一番細い段の率を一本だけ。正しいと分かるまで変えてよい。量は下限・品質は門・社の実測 2026-10-28)