ルール作りは「書き足す」より「揃える」仕事

社内ルールの作り方を調べると、多くは就業規則や社内規程の書き方、そして作ったルールを社員にどう守らせるかの話です。けれど、ルールを書いた後の会社で本当に起きるのは、「書いてあるのに、誰も守っていない」行が少しずつ増えていくことです。

大和ViSiON がルール作りと言うとき、中心に置くのは書き足すことではなく、書いてある事と現実を揃え続けることです。新しいルールを一つ足すより、守られていないルールを一つ片づけるほうが、会社全体のルールの効き目は上がります。

守られていない一行が、隣のルールを軽くする

守られていないルールが一つ在ると、読む人には「どれが破ってよくて、どれを守るのか」の区別がつかなくなります。株式会社命の規則の紙はこれを、破られたまま放っておかれた 1 行が、隣の 9 行の重みを下げる、と書いています(株式会社命の規則の紙・2026-10-26 時点)。

しかも、小さい違反ほど区別がつかなくなる度合いは大きくなります。大きな違反は目立つので誰かが直しますが、小さな違反は「まあいいか」で残り、残ったまま「このくらいは破ってよい」という前例になるからです(株式会社命の規則の紙・2026-10-26 時点)。社内ルールが形だけになる会社は、ルールが厳しすぎるのではなく、守られていない小さな行を放っておいた会社です。

見るのは一つの問い — そのルールに反する実物が在るか

ルールが効いているかどうかを、点数や「だいたい守られている」で測ると、判断が人によって揺れます。株式会社命の規則の紙では、判定を二値にしています。問いは「そのルールに反している実物が在るか」だけです(株式会社命の規則の紙・2026-10-26 時点)。

在れば、ルールと現実のどちらかが間違っています。ここで大事なのは、違反した人や仕事をすぐに悪者にしないことです。現実の仕事のほうが正しく、ルールのほうが古くなっている場合も、同じくらいよくあります。

直すのはルールか、実物か、それとも消すか

反している実物が見つかったら、次の三つから一つを選びます。見分ける手がかりは、違反の数と、その違反がまっとうな仕事の結果かどうかです。

守られていないルールを見つけたときの三つの直し方
違反の様子選ぶ直し方考え方
違反が複数あり、どれも正しい仕事の結果ルールを書き換える現実のほうが正しい。ルールが現実に追いついていない
違反が 1〜2 件で、直しても他が壊れない実物を直すルールが正しい。外れた物をルールに戻す
違反が多数で、守っている物の方が少ないルールを消すそのルールはもう会社の決め方ではない

出典: 株式会社命の規則の紙(2026-10-26 時点・「規則が現実と合っていないと気づいたら」の節の見分け方)

どの場合も、ルールを弱めるのは最後の手です。「例外を認める」「できるだけ守る」と書き足してルールを緩めると、違反は消えたように見えますが、区別のつかない行がもう一つ増えるだけです。まず揃える、それでも合わないときに初めて弱めることを考えます(株式会社命の規則の紙・2026-10-26 時点)。

株式会社命で実際に選んだ直し方

大和ViSiON を運営する株式会社命では、AI エージェントが日々の仕事を回しており、その仕事を縛るルールも紙に書いています。三つの直し方は、どれも実際に選んだことがあります。

ルールの方を書き換えた

「台帳の名前はこの 2 つ以外を使わない」というルールに対し、反している実物が 5 本在りました(社の実測 2026-09-20・株式会社命の判断の記録)。5 本とも、まっとうな仕事の結果として生まれたものでした(社の実測 2026-09-20・株式会社命の判断の記録)。そこで実物を直すのではなく、ルールの方を書き換えました。あわせて規則の紙に「規則が現実と合っていないと気づいたら」という節を新しく足しています。このとき社長は「これはとても大事な観点なので何かに焼き込んでほしい」と言いました(社の実測 2026-09-20・株式会社命の判断の記録)。

ルールを消した

判断の記録の一つの列には「索引に載っている名前だけを書く」というルールが残っていましたが、記録の置き場が変わった後は、索引そのものが要らなくなっていました。社長の「いちいち索引を作る必要はなさそう」という一言で、その行を消しています(社の実測 2026-09-25・株式会社命の判断の記録)。守る理由が無くなったルールを残しておくと、それ自体が「守らなくてよい行」になります。

緩めずに、まず揃えた

章の名前を自動で検める仕組みが、濁点の文字の符号の違いのせいで、正しい名前を誤って落としたことがありました。このときは検める仕組みを緩めず、文字の符号の方を揃えています(社の実測 2026-09-19・株式会社命の規則の紙)。検め方を緩めれば早く通りますが、それはルールを弱める手で、最後に取っておくものです。

株式会社命で、守られていないルールに出会ったときの記録
日付見つかった事選んだ直し方
2026-09-19文字の符号の違いで、正しい章の名前が検めで落ちた検め方は緩めず、文字の符号を揃えた
2026-09-20台帳の名前のルールに反する実物が 5 本、どれもまっとうな仕事の結果ルールを書き換え、「規則が現実と合っていないと気づいたら」の節を足した
2026-09-25置き場が変わり、索引に載った名前だけを書くルールが要らなくなったルールの行を消した
2026-10-25配る写しと元の本文の中身が食い違っていた見つけた AI の席は直さず、判断の記録に 1 行書いて止まった

出典: 社の実測 2026-09-19(株式会社命の規則の紙)・社の実測 2026-09-20/2026-09-25/2026-10-25(株式会社命の判断の記録)

気づいた人は、その場で直さずに一行書いて止まる

守られていないルールに気づいた人が、その場でルールか実物のどちらかを直してしまうと、どちらが正しかったのかを誰も決めないまま、現実だけが動きます。株式会社命の規則の紙では、気づいた AI の席はその場で規則も実物も直さず、判断の記録に一行だけ書いて止まる、と決めています。どちらを直すかは案にして、社長が決めます(株式会社命の規則の紙・2026-10-26 時点)。

実際に、AI の席が、配る写しと元の本文の中身が食い違っている実物を見つけたときも、直さずに判断の記録へ 1 行書いて止まりました(社の実測 2026-10-25・株式会社命の判断の記録)。気づくのは誰でもよく、決めるのは一か所に寄せる。これで、気づくたびにルールが勝手に書き換わることを防げます。

判断を一行ずつ書き残して社長の手から渡していく考え方は仕組み化とはで、社長の頭の中にしか無い決め方をほどく手順は属人化の解消で書いています。

ルールの紙に足しておく節の見出し

この頁では、社内ルールのひな形は配りません。ひな形の中身を写したルールは、自分の会社の現実と最初から揃っていないからです。代わりに、どの会社のルールの紙にも足しておける節の、見出しだけを置きます。

  • 規則が現実と合っていないと気づいたら
  • 判定の問い(そのルールに反する実物が在るか)
  • 三つの直し方の見分け方
  • 弱めるのは最後の手であること
  • 気づいた人がすること・決める人

中身は、自社で守られていない行を一つ見つけたときに、その一件から書き起こしてください。自分の会社がルールで回る段にいるのか、まだ社長の判断で回っている段なのかは、資産家昇格の段の地図で確かめられます。社長がいなくても回る会社がほかに何を備えているかは、社長がいなくても回る会社の五つの条件にまとめています。

よくある質問

社内ルールとは、簡単に言うと何ですか

誰が担っても同じに動けるよう、会社の中の仕事の決め方を言葉にして共有したものです。書いてあることと、実際に会社で起きていることが揃っていて、初めてルールとして効きます。

社内ルールと社内規程・就業規則は何が違いますか

就業規則や社内規程は、会社の決まりのうち、手続きを踏んで定める正式な文書です。社内ルールはそれより広く、日々の仕事の進め方や名前の付け方のような小さな決め方まで含みます。小さな決め方ほど守られていない行が残りやすいので、揃え続ける手入れが要ります。

ルールが守られないとき、罰則を強めればよいですか

先に、そのルールに反している実物が在るかを確かめ、ルールと現実のどちらが間違っているかを見ます。違反がまっとうな仕事の結果なら、直すべきはルールの方です。守らせる力を強めるのは、ルールが正しいと分かった後の話です。

古くなったルールは、残しておいても害はありませんか

守られないまま残ったルールは、ほかのルールまで「破ってよいもの」に見せてしまいます。守る理由が無くなったルールは、残すより消したほうが、残りのルールの重みが保たれます。

社内ルールのひな形やテンプレートはありますか

この頁では配っていません。ひな形を写したルールは自社の現実と揃っていないことが多いので、守られていない行を一つ見つけたときに、その一件から自社のルールを書き起こすことをすすめています。

出典

  • 株式会社命の規則の紙(2026-10-26 時点・判定の問い、三つの直し方の見分け方、気づいた席の動き方。2026-09-19 の文字の符号を揃えた件を含む)
  • 株式会社命の判断の記録(社の実測 2026-09-20・台帳の名前のルールを書き換えた件)
  • 株式会社命の判断の記録(社の実測 2026-09-25・索引のルールの行を消した件)
  • 株式会社命の判断の記録(社の実測 2026-10-25・配る写しと元の本文の食い違いを書き残した件)