「目標設定」で出てくるのは、社員の評価の話が多い

「目標設定」を調べると、上に並ぶのは社員一人ひとりの目標の立て方と、人事評価の話です。SMART や MBO(目標による管理)の説明は、社員の目標を書かせて評価するための物で、会社そのものの目標をどう決めるかには、あまり触れていません。

中小企業やひとり社長の会社で困るのは、その手前です。年の初めに目標を立てても、四半期や今週の動きに落ちない。目標の一覧に細かい作業が混ざって、どれが本当の目標なのか分からなくなる。この頁は、社員の評価ではなく会社の目標(1 年と 90 日)の決め方に絞って書きます。

もとにしたのは、大和ViSiON を運営する株式会社命が、自社の 90 日の目標と 1 年の目標を決め直した時に社長が下した判断です。運営会社では、日々の仕事の多くを AI エージェントの担当が回しています。その会社で引いた線は、人の部下に仕事を任せる会社にもそのまま使えます(株式会社命の判断の記録・社の実測 2026-10-19・2026-10-25)。

年の目標は、数字の前に「何の年か」を一言で決める

運営会社が 2027 年の目標を考え直した時、最初に置いた問いは売上の額ではなく「2027 年は何の年か」でした(株式会社命の判断の記録・社の実測 2026-10-25)。

社長はまず過去を振り返りました。2025 年は商品を作る年。2026 年も商品を作りながら、裏方の事務と日々の運用を AI に任せられるようになる年だった。そのうえで、2027 年を「マーケティングの年」と言いました(株式会社命の判断の記録・社の実測 2026-10-25)。

面白いのは、その直後の動きです。社長は続けて 2027 年を一度「無人経営の年って感じかも」と言い換え、同じ朝のうちに「2026 年が無人経営の年っちゃ年だった」と言い直して、2027 年は「マーケティングの年」に戻しました。裏方も運用も、すでにかなり人の手を離れて回っているので、来年はその上で売り方に力を注ぐ年だ、という理由です(株式会社命の判断の記録・社の実測 2026-10-25)。

この揺れは、決め方が悪かったからではありません。「何の年か」を言葉にしたから、今年すでに終わった事と、来年やる事の境目が見えて、言い直せたのです。数字から入ると、こうした言い直しは起きにくく、去年の延長の数字が並ぶだけになりがちです。

年の目標を考え直す時期についても、社長は「年の目標は今かんがえなおしましょう」と答えています。先の数字がそろうのを待たず、気づいたその場で考え直しました(株式会社命の判断の記録・社の実測 2026-10-25)。

1 年の目標は暦の 12 か月に揃え、今年の残りは 90 日の目標で持つ

目標を決め直す途中で、もう一つずれが見つかりました。戦略の紙では「1 年の目標」の期間が 2026 年 10 月から 2027 年 12 月までの 15 か月、計画の紙では 2027 年 1 月から 12 月までの 12 か月になっていたのです(株式会社命の判断の記録・社の実測 2026-10-25)。

社長が選んだのは、1 年の目標を 2027 年 1〜12 月の 12 か月に揃え、今年の 10〜12 月の残り 3 か月は、90 日の目標として別に持つ形です。戦略の紙の期間のほうを直しました(株式会社命の判断の記録・社の実測 2026-10-25)。

年の途中で目標を決め直すと、「今から 1 年」で区切りたくなります。けれどそうすると、紙ごとに 1 年の始まりと終わりがずれ、どの数字がどの期間の物かを毎回確かめることになります。1 年は暦に揃え、端の数か月は 90 日の目標で受け止めると、年の目標と 90 日の目標が同じ区切りで並びます。

90 日の目標は、候補を 3 つに分けるところから始める

運営会社では、90 日の目標は四半期の物だけを指し、1 年の物は年間目標として別に持ちます(株式会社命の判断の記録・社の実測 2026-10-19)。年の目標が「どちらへ向かうか」なら、90 日の目標は「この四半期に何を終えるか」です。

その 90 日の目標を決め直した時、まずやったのは、挙がっていた候補を「90 日の目標」「細かい作業」「来年」の 3 つに分けることでした(株式会社命の判断の記録・社の実測 2026-10-19)。社長はこの分け方を見て、基本はこれでよいと答えています。

目標の候補の分け先と、それぞれの持ち方
分け先入る物持ち方
1 年の目標(年間目標)来年が「何の年か」と、その年に向かう先暦の 12 か月で持つ。90 日の目標を選ぶ時の向きとして読む
90 日の目標この四半期に会社として終える事担当・二択で決まる完了の条件・社長の時間の 3 つを付ける
細かい作業普段の仕事で回る事、他の頼みが終われば済む事目標に入れず、日々の仕事や頼みの側で片付ける
来年今の四半期では手を付けない事捨てずに置いておき、次に年の目標を考える時に読み直す

出典: 株式会社命の判断の記録(候補を 90 日の目標・細かい作業・来年に分けた・社の実測 2026-10-19/1 年の目標を暦の 12 か月に揃えた・社の実測 2026-10-25)。「持ち方」の列は大和ViSiON 編集部がまとめたもの

目標に入れない物は、2 つの問いだけで外す

分けるときにいちばん迷うのは、「これは目標か、細かい作業か」の線です。運営会社でも、最初に並べた 90 日の目標には細かい作業が多く混ざっていました。社長自身、決め直した後に「最初は結構砂利があった」と振り返っています(「砂利」は社内の言い方で、目標に混ざった細かい作業のこと。株式会社命の判断の記録・社の実測 2026-10-19)。

そこで、目標に入れない物を決める問いを置きました。AI の担当が出した案は 4 つの問いでしたが、社長は「これだけでいい」と 2 つに絞りました(株式会社命の判断の記録・社の実測 2026-10-19)。

  1. 担当が普段の仕事で回す物は、目標にしない。毎週・毎月の仕事として誰かがすでに回している物は、目標に書かなくても進む。目標に入れると、終わらない「目標」が一覧に残り続ける
  2. 他の頼みが終われば済む物は、外す。すでに誰かに頼んである事が終われば自然に片付く物は、別の目標として立てない。立てると、同じ事を二か所で追うことになる

問いを増やせば、細かい場合分けはできます。けれど問いが多いと、決める人が毎回すべてに当てはめる手間がかかり、結局使われなくなります。外す理由が 2 つに収まるなら、2 つで十分です。

一つの目標は「担当・完了の条件・社長の時間」の 3 つで書く

外した後に残った目標は、運営会社では次の 3 つの欄で書く形に揃えました。社長はこの形でよいかを自分から確かめ、その形で目標を書き直しています(株式会社命の判断の記録・社の実測 2026-10-19)。

90 日の目標を書く 3 つの欄
欄書く事書かないと起きる事
担当その目標を終わらせる人(AI の担当を含む)を一人会議のたびに「これは誰が見ているのか」から話が始まる
二択の完了の条件終わったか終わっていないかが、はい・いいえで決まる一文「だいたい進んだ」が続き、四半期の終わりに終わったかどうかで揉める
社長の時間その目標のために社長が使う時間(判断・確認など)社長の手が要る目標が重なり、どれも社長待ちで止まる

出典: 株式会社命の判断の記録(90 日の目標を担当・二値の完了条件・社長の時間の 3 つの形で書き直した・社の実測 2026-10-19)。「書かないと起きる事」の列は大和ViSiON 編集部がまとめたもの

3 つ目の「社長の時間」は、一般の目標設定ではあまり見ない欄です。会社の目標の多くは、どこかで社長の判断を待ちます。担当と完了の条件だけを書くと、社長の時間がどの目標にどれだけ要るかが見えず、四半期の終わりに複数の目標が同時に社長待ちになります。先に書いておけば、社長の手が足りない四半期に、目標を減らすか担当に任せる範囲を広げるかを、始める前に決められます。

この 90 日の目標の進み具合と、毎週の数字(KPI)は別に見ています。目標から KPI をどう取るかはKPI 設定とはに、目標の進み具合を週 1 回の会で確かめる回し方は経営会議とはに書いています。

会社の目標の立て方 — 年から 90 日へ、6 つの手順

ここまでの判断を、自社で目標を立てる時の手順にすると次のとおりです。

  1. 去年と今年が「何の年だったか」を一言ずつ書く。終わった事と、まだ終わっていない事の境目が見える
  2. 来年が「何の年か」を一言で決める。言い直してよい。数字はこの一言が決まってから付ける
  3. 1 年の目標の期間を暦の 12 か月に揃える。今年の残りの月は、1 年の目標に混ぜず 90 日の目標で持つ
  4. 90 日の目標の候補を、「90 日の目標・細かい作業・来年」に分ける。来年に回す物は捨てずに残す
  5. 2 つの問いで外す。普段の仕事で回る物と、他の頼みが終われば済む物は、目標にしない
  6. 残った目標に、担当・二択の完了の条件・社長の時間を書く。3 つの欄が埋まらない物は、まだ目標の形になっていない

運営会社では、こうして決めた目標を AI の担当に渡し、日々の仕事として回させています。AI に何を任せ、何を社長が持つかの全体の考え方はAI 経営とはに、判断まで任せる線の引き方はAI 駆動経営にまとめています。

よくある質問

会社の目標設定とは何ですか

会社として 1 年で向かう先と 90 日で終える事を決め、それぞれに担当と「終わったかどうか」の線を付けることです。社員一人ひとりの評価のための目標とは別に、会社そのものの目標として決めます。

年間目標の立て方は、何から始めればよいですか

売上の数字より先に、来年が「何の年か」を一言で決めます。運営会社では、2025 年は商品を作る年、2026 年は裏方と運用を任せる土台の年と振り返ったうえで、2027 年を「マーケティングの年」と決めました(株式会社命の判断の記録・社の実測 2026-10-25)。

四半期目標(90 日の目標)と年間目標はどう分けますか

年間目標は暦の 12 か月で向かう先を決め、四半期目標はその 3 か月で終える事を決めます。年の途中で決め直す時は、今年の残りの月を年間目標に混ぜず、90 日の目標として別に持つと区切りがずれません。

目標に細かい作業が混ざってしまいます。どう外せばよいですか

「担当が普段の仕事で回す物は目標にしない」「他の頼みが終われば済む物は外す」の 2 つの問いで外します。運営会社でも、AI の担当が出した 4 つの問いを社長が 2 つに絞りました(株式会社命の判断の記録・社の実測 2026-10-19)。

経営目標には何を書けばよいですか

一つの目標ごとに、担当・終わったかどうかが二択で決まる完了の条件・社長の時間の 3 つを書きます。3 つが埋まらない物は、まだ目標の形になっていないので、細かい作業か来年の候補に戻します。

出典

  • 株式会社命の判断の記録(90 日の目標に入れない物を決める問いを、AI の担当の案の 4 つから「担当が普段の仕事で回す物は目標にしない」「他の頼みが終われば済む物は外す」の 2 つに絞った。90 日の目標は四半期の物だけで、1 年の物は年間目標として持つ・社の実測 2026-10-19)
  • 株式会社命の判断の記録(90 日の目標を担当・二値の完了条件・社長の時間の 3 つの形で書き直した。社長は「最初は結構砂利があった」と振り返った・社の実測 2026-10-19)
  • 株式会社命の判断の記録(目標の候補を 90 日の目標・細かい作業・来年の 3 つに分けた・社の実測 2026-10-19)
  • 株式会社命の判断の記録(2027 年は何の年かを考え直し、2025 年は商品を作る年、2026 年は裏方と運用を任せる土台の年と振り返ったうえで、一度「無人経営の年」と言い、同じ朝に「マーケティングの年」へ言い直した・社の実測 2026-10-25)
  • 株式会社命の判断の記録(年の目標は先の数字を待たず、その場で考え直すことにした・社の実測 2026-10-25)
  • 株式会社命の判断の記録(1 年の目標の期間を、15 か月と 12 か月で食い違っていた所から 2027 年 1〜12 月の 12 か月に揃え、今年の 10〜12 月の残り 3 か月は 90 日の目標として別に持つことにした・社の実測 2026-10-25)