コアバリューとは — 掲げる言葉ではなく、迷った時に決める順
コアバリューとは、会社が迷った時に何を先に取るかを決める、判断の順を短く書いた言葉です。
- コアバリューは壁に掲げる標語ではなく、二つの良い案がぶつかった時に「どちらを先に取るか」を決める順として持つと効く
- 運営会社は候補を出し合って三つに絞り、前に掲げていた三つを上書きした。その経緯と、確定した三つの文面
- 置き場は規則の一番上。人も AI エージェントも、同じ三行で迷いを決める
コアバリューの意味 — 「大切にする事」を、迷った時の順に直す
コアバリュー(core value)は、直訳すると「中心にある価値」です。一般には、会社が何を大切にするかを短い言葉で表した物を指し、経営理念やミッションと並べて語られます。理念が「何のためにあるか」、ミッションが「何を果たすか」を言うのに対して、コアバリューは「どう振る舞うか」の側にあります。
わかりやすく言い直すと、コアバリューが役に立つのは、正しい答えが二つ出て、どちらか一つしか取れない場面です。「早く出す」も「丁寧に作る」もどちらも良い事で、普段は両方を目指せます。けれど締め切りが迫れば、どちらかを先に取るしかありません。その時に「この会社ではこちらを先に取る」と決めてある言葉が、コアバリューの本当の働きです。
だから大和ViSiON では、コアバリューを「掲げる言葉」ではなく「迷った時に決める順」として扱います。良い言葉を並べるだけなら、どの会社の物も似てきます。順を決めた言葉は、会社ごとに違う形になります。
掲げる言葉としての持ち方と、決める順としての持ち方
同じ「誠実」「挑戦」といった言葉でも、どう持つかで使われ方が変わります。違いを並べると次のとおりです。
| 比べる所 | 掲げる言葉として持つ | 迷った時に決める順として持つ |
|---|---|---|
| 言葉の形 | 「誠実」「挑戦」など、一語の美徳 | 「A > B」のように、何を先に取るかが読める文 |
| 置き場 | 会社案内・採用の頁・壁の額 | 毎日読む規則の一番上 |
| 使われる時 | 朝礼や節目に読み上げる時 | 案が二つに割れて、どちらかを選ぶ時 |
| 読む相手 | 社員 | 社員と、仕事を任せた AI エージェントの両方 |
| 合っているかの確かめ方 | 言葉を覚えているか | 実際の判断が、その順に沿っているか |
出典: 大和ViSiON 編集部の整理(一般に言われるコアバリューの持ち方と、株式会社命の規則の紙(2026-10-26 時点)の持ち方を比べた)
右の列の持ち方では、言葉の数は少ないほど使えます。迷った瞬間に思い出せない言葉は、順として働かないからです。
運営会社は、コアバリューをこう決め直した
大和ViSiON を運営する株式会社命は、経営戦略の会でコアバリューを決め直しました。進め方は、候補を出し合い、絞り、前の物を上書きする、という順でした(社の実測 2026-10-13・株式会社命の判断の記録)。
まず社長が四つの案を出しました。「資産価値>工数」「仕組み>素早く出す」「単一の真実源」「境内のように整える」です。そこに、会社の仕事を担う AI エージェントが「実証する」を足す案を出しました。人が出した案に AI エージェントが一つ足し、その全部を並べたうえで三つに絞って確定しています(社の実測 2026-10-13・株式会社命の判断の記録)。
この時、五月に掲げていた三つ、「自律性」「スピード」「誠実さ」は残さずに上書きしました(社の実測 2026-10-13・株式会社命の判断の記録)。古い三つを横に並べて残すと、迷った時にどちらの三つで決めるのかという新しい迷いが生まれます。決め直すなら、前の物は消して一つにする。これ自体が、新しく決めた三つのうちの一つ「真実源は一つ」に沿った判断でもありました。
| 段 | 中身 |
|---|---|
| 五月に掲げていた三つ(上書きした) | 自律性・スピード・誠実さ |
| 社長が出した四つの案 | 資産価値>工数/仕組み>素早く出す/単一の真実源/境内のように整える |
| AI エージェントが足した案 | 実証する |
| 確定した三つ | 資産価値>工数・効率/真実源は一つ/神社の境内のように整える |
出典: 社の実測 2026-10-13(株式会社命の判断の記録・経営戦略の会でコアバリューを決め直した時の記録)
確定した三つと、目的の一文
確定した三つの文面は次のとおりです(社の実測 2026-10-13・株式会社命の判断の記録)。
- 資産価値(拡張性・品質・耐久性)> 工数・効率。手間が少ない方より、あとに残って伸び続ける方を先に取る。
- 真実源は一つ。同じ物を二か所で持たず、統合する。自分で統合できない物は、統合を提案する。
- 神社の境内のように整える。置き場は戦略的に決め、乱さない。
一つ目は「>」の形で、何を先に取るかがそのまま読めます。二つ目と三つ目は「>」を使っていませんが、「二か所に置く」「とりあえず空いている所に置く」という楽な方を選ばない、という順を言っています。三つとも、迷った時にどちらへ倒すかが一行で分かる形です。
三つには、目的の一文を添えました。「すべてを AI エージェントに任せ、AI エージェントだけで回る体制を作る」(社の実測 2026-10-13・株式会社命の判断の記録)。コアバリューは順であり、順には向かう先が要ります。目的の一文があるから、「資産価値を先に取る」が何のための資産かがぶれません。会社の数字の物差しをどこに置くかは、AI 経営とはで詳しく書いています。
置き場は規則の一番上 — 人と AI エージェントが同じ三行で決める
決め直した三つは、会社の規則を書いた紙の一番上、第 0 節に置いています。添えてある指示は一行だけで、「迷ったら、この三つのどれに沿うかで決める」です(株式会社命の規則の紙・2026-10-26 時点)。
株式会社命では、仕事の多くを役目ごとの AI エージェントが担っています。それぞれの AI エージェントの性格、たとえば口調や慎重さは、役目ごとに変えてかまいません。けれど、この三行の芯は役目ごとに変えません(株式会社命の規則の紙・2026-10-26 時点)。人が迷っても、どの AI エージェントが迷っても、同じ三行で決める。これが、コアバリューを「人と AI の両方が読む順」として持つということです。
もう一つの決まりは、AI エージェントそれぞれの手順書にこの節を写さないことです。手順書には中身を書かず、規則の紙のその節を指すだけにしています(株式会社命の規則の紙・2026-10-26 時点)。写せば、いつか一か所だけ直して他が古いまま残ります。コアバリューの置き場そのものにも「真実源は一つ」を当てている、ということです。同じ情報を一か所にまとめる考え方は情報の一元化で、行動の決まりへの落とし方は行動指針で書いています。
同じ日に、会員に配っている規則の紙の雛形にも、一番上に同じ形の「芯」の節を置きました(社の実測 2026-10-13・株式会社命の判断の記録)。自分の会社で使う形と、会員が自分の会社に写して使う形を、同じ構えにそろえています。
判断をどこまで AI エージェントに任せるかの全体像はAI 駆動経営とはに、AI に任せる範囲の線の引き方はAI 社長とはにまとめています。
コアバリューの作り方 — 出し合い、絞り、上書きする
運営会社がたどった順を、自分の会社で使える手順に直すと次のようになります。大切なのは、言葉を磨く事より、迷った時に使える形にする事です。
| 段 | やる事 | 確かめる事 |
|---|---|---|
| 一、迷った場面を集める | 最近、案が二つに割れて決めるのに困った場面を書き出す | どの場面でも、何と何がぶつかったかが言えるか |
| 二、候補を出し合う | 社長が案を出し、社員や AI エージェントにも足す案を出してもらう | 社長ひとりの案だけで閉じていないか |
| 三、順の形に直す | 一語の美徳を「A > B」か「〜しない」の文に直す | 何を先に取るかが一行で読めるか |
| 四、少なく絞る | 集めた場面に当てて、決め手になった物だけ残す | 迷った瞬間に思い出せる数か |
| 五、前の物を上書きする | 古いコアバリューは並べて残さず、消して一つにする | 二つの版が同時に生きていないか |
| 六、規則の一番上に置く | 規則の先頭に置き、手順書からはそこを指すだけにする | 写しが二か所以上に無いか |
出典: 社の実測 2026-10-13(株式会社命の判断の記録)と、株式会社命の規則の紙(2026-10-26 時点)の進め方を、大和ViSiON 編集部が手順に直した
自分の会社が今どの段にいて、コアバリューを決め直すのがどの段の仕事にあたるかは、資産家昇格の段の地図で確かめられます。
他社のコアバリューの例を見るときに、確かめる一点
コアバリューを作る時、多くの人がまず他社の例を探します。有名な会社の物には、短くて覚えやすい言葉が並んでいます。参考にするのはよい事ですが、写す前に一つだけ確かめてください。その言葉で、自分の会社のどの迷いが決まるか、です。
「顧客第一」は良い言葉ですが、「お客様の頼みどおり急いで出す」と「品質を守って遅らせる」が割れた時、どちらにも読めてしまいます。どちらにも読める言葉は、順として働きません。他社の例は「何と何を比べているか」を読むために使い、言葉そのものは自分の会社で迷った場面から作るほうが、使えるコアバリューになります。
よくある質問
コアバリューとは、わかりやすく言うと何ですか
会社が迷った時に、何を先に取るかを決める判断の順を、短く書いた言葉です。良い案が二つに割れて、どちらか一つしか取れない時に、その会社ならどちらを選ぶかを決めておく物です。
コアバリューと行動指針は、何が違いますか
コアバリューは迷った時に何を先に取るかという順で、行動指針はその順を日々の振る舞いに落とした決まりです。コアバリューが芯で、行動指針はそこから出てくる枝にあたります。
コアバリューは、いくつ決めればよいですか
迷った瞬間に思い出せる数にとどめるのがよいです。運営会社では、出し合った候補から三つに絞って確定しました(社の実測 2026-10-13・株式会社命の判断の記録)。
一度決めたコアバリューを、変えてもよいですか
変えてかまいません。ただし変える時は、古い物を残さずに上書きします。運営会社は、五月に掲げていた三つを新しい三つで上書きしました(社の実測 2026-10-13・株式会社命の判断の記録)。二つの版が並ぶと、どちらで決めるかという新しい迷いが生まれるからです。
AI エージェントにも、コアバリューは要りますか
仕事を任せるなら要ります。AI エージェントも、案が二つに割れた時にどちらを先に取るかで迷うからです。運営会社では、AI エージェントの口調や慎重さは役目ごとに変えても、コアバリューの三行は変えず、人と同じ三行で決めています(株式会社命の規則の紙・2026-10-26 時点)。
出典
- 株式会社命の判断の記録(経営戦略の会でコアバリューを決め直した時の記録・前に掲げていた三つの上書き・会員向けの雛形への反映・社の実測 2026-10-13)
- 株式会社命の規則の紙(第 0 節「芯」・2026-10-26 時点)
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