文章の表記ゆれは、決まりを一枚にして機械で揃える

表記ゆれを調べている人の多くは、文章を校正する立場にいます。「行う」と「行なう」のような送り仮名、「サーバー」と「サーバ」のような長音、英数字や記号の全角と半角、「出来る」と「できる」のような漢字とひらがなの使い分けです。

これらの対策は、答えがはっきりしています。どちらに揃えるかを一つずつ決めて表記の決まりの紙に書き、文章校正の道具や置換で機械的に揃えることです。どちらが正しいかを毎回考える必要はありません。一度決めた側に揃っていれば、読む人は迷いません。

ただ、会社の仕事で事故を起こすのは、こうした文字の揺れよりも、同じ物の呼び名が揺れることのほうです。この頁の残りは、そちらの話をします。

会社の中の呼び名の揺れは、数えられなくなる・取り違える原因

送り仮名が揺れていても、読む人は同じ意味に読めます。ところが、たとえばある講座の中身を、ある書類では「本講座」、別の書類では「プログラム」、また別の所では「コンテンツ」と呼んでいると、読む人はそれが同じ物か別の物かを判断できません。

呼び名の揺れが起こす困り事は、大きく二つです。

  • 数えられなくなる。記録を呼び名で集めて数えるとき、表記が一つずれるだけで別の物として数えられます。「セールス」と「営業」が混ざっていれば、どちらの数も正しくありません
  • 取り違える。社内だけで通じる名前が、お客様の見る画面に出ると、相手は「自分はどれに当たるのか」が分からなくなります。AI に仕事を渡すときも、呼び名が揺れていれば、AI は別の物として扱います

社長が全部を見ている間は、社長の頭の中で揃えられています。社長が手を離したとき、揃える人がいなくなって、揺れが表に出てきます。

数える欄は、語を決めて自由に書かせない

大和ViSiON を運営する株式会社命では、判断を一件ずつ書き残す「判断の記録」を付けています。その記録の「領域」の欄に書いてよい語は、商品・マーケ・セールス・オペ・バックオフィス・開発・棚(社内の資料と手順の置き場)・全(会社全体)の 8 つだけと、規則の紙で決めています(株式会社命の規則の紙・社の実測 2026-10-27)。

規則の紙には、理由も一行で書いてあります。「自由記述にしない。表記が揺れた瞬間に数えられなくなる」(株式会社命の規則の紙・社の実測 2026-10-27)。どの領域でどれだけ判断が出ているかを後から数えるには、書く側に語を選ばせるのではなく、決まった語の中から選ばせるしかありません。

同じ紙には、判断の型の名前についても「一度決めた名前を変えない(変えると数えられない)」と書いてあります(株式会社命の規則の紙・社の実測 2026-10-27)。数えるための名前は、決めたら動かさない。これが社内用語の統一の土台です。

どの呼び名に揃えるか — 今動いている物と、相手に見えている物

揺れに気づいたとき、いちばん迷うのは「どれに揃えるか」です。運営会社で実際に揃えた例を並べると、決め手は二つに絞れます。今動いている物(実際に使われている画面や仕組み)で使っている呼び名か、相手に見えている物(お客様や会員が目にする名前)として通じる呼び名かです。

表記ゆれの例と、揃え方(株式会社命の実例)
揺れていた所揺れの形揃えた先決め手
契約書の中の、講座の中身の呼び名同じ物が 3 通りの呼び名会員サイトで使っている呼び名。契約書は次の版で直す今動いている物と、以前の社長の答えが同じ呼び名だった
会員に見える画面と、公開の答え集社内の区分名(英語の略号)がそのまま出ていた売っている段の名前相手に見えている物。内部の識別子と見せる名前は別物
管理画面のメニューの塊の名前一度「会員サイト」と決めた「会員サービス」に替えた中身がサイトだけではなかった
資格の段の呼び名数字の級(3・2・1 級)役割の名前(Associate/Professional/Master)見た人が上下を読める名前にした
判断の記録の「領域」の欄自由に書くと揺れる決めた 8 つの語だけ数えるための名前は、決めたら変えない

出典: 株式会社命の判断の記録(社の実測 2026-10-24・2026-09-19・2026-10-25・2026-10-09)と株式会社命の規則の紙(社の実測 2026-10-27)。「決め手」の列は大和ViSiON 編集部がまとめたもの

契約書の呼び名は、会員サイトの呼び名に揃えた

同じ講座の中身の呼び名が、契約書の中で 3 通りに揺れていたことがあります。今動いている物である会員サイトと、以前に社長が答えた時の呼び名が同じだったので、そちらに揃えると決めました(株式会社命の判断の記録・社の実測 2026-10-24)。

ただし、契約書はその場では書き換えていません。契約の中身を変えるのは社長が決める事なので、契約書は次の版で直すことにしました(株式会社命の判断の記録・社の実測 2026-10-24)。揃える先を決める事と、揃える作業をする事は別で、書類によっては直してよい人と時が決まっています。

会員に見える所には、社内の区分名を出さない

会員に見える画面と公開の答え集に、社内で使っている区分名(英語の略号)がそのまま出ていたことがあります。社長はこれに、「その名の会員は特にない」と答えていました(株式会社命の判断の記録・社の実測 2026-09-19)。

運営を任された AI の担当は、「仕組みに実在する区分名は残し、説明だけ整える」案を出しました。社長の答えは、不適切な箇所は全部、売っている段の名前に変えて、直りましたと伝えたい、というものでした(株式会社命の判断の記録・社の実測 2026-09-19)。

ここで分けたのは、仕組みの中で使う内部の識別子と、会員に見せる名前は別物だということです。見せる名前は、売っている段の名前に揃えました。会員への返信も、言い訳や説明ではなく「表示を直しました」という完了の報告にしています(株式会社命の判断の記録・社の実測 2026-09-19)。

決めた後でも、中身に合わない呼び名は替える

「一度決めた名前を変えない」という決まりと、呼び名を替えた例が並んでいるのは、矛盾ではありません。変えないのは、記録を数えるための名前です。見せる名前や塊の名前は、中身と合っていなければ、決めた後でも替えます。

管理画面のメニューの塊は、一度「会員サイト」と名付けていました。それを「会員サービス」に替えています。社長の理由は「MCP とかスロット管理ってサイトじゃないから」でした(株式会社命の判断の記録・社の実測 2026-10-25)。塊の中にサイト以外の物が入っているのに「サイト」と呼び続ければ、使う人は中身を取り違えます。

資格の段の呼び名も替えました。数字の級(3・2・1 級)から、役割の名前(Associate/Professional/Master)にしています。日本語の感覚では「プロフェッショナル」と「アーキテクト」のどちらが上かが読めないため、上の段は Master にしました。社長の答えは「それで OK」でした(株式会社命の判断の記録・社の実測 2026-10-09)。

どちらも、見る人が名前だけで中身や上下を正しく読めるかどうかで決めています。相手に見えている名前は、相手が読み違えないことが一番の条件です。

社内用語の統一を進める手順

ここまでの例を、社内用語を統一するときの手順にすると次のとおりです。

  1. 数える欄を先に決める。記録や集計に使う欄は、書いてよい語を決め、自由に書かせない。その語は決めたら変えない
  2. 揺れに気づいたら、揃える先を「今動いている物」で決める。実際に使われている画面や仕組みの呼び名に揃えると、直す所が一番少なく済む
  3. 相手に見える所は、相手に通じる名前にする。内部の識別子は仕組みの中に残してよいが、画面や答え集には出さない
  4. 直してよい人と時を確かめてから直す。契約書のように、変えるのが社長の判断になる物は、その場で書き換えず次の版で直す
  5. 中身に合わない名前は、決めた後でも替える。見せる名前は、見た人が読み違えないことを優先する

揃えた呼び名は、どこか一か所に正本として書いておかないと、また揺れます。物ごとに正本を一つ決める考え方は情報の一元化とはに、決まりの紙と実物がずれたときの直し方は社内ルールの直し方にまとめています。

呼び名が揃っていると、仕事を人や AI に渡したとき、渡された側は同じ物を同じ名前で扱えます。社長が全部を見ていなくても回る会社の条件は、社長がいなくても回る会社の 5 つの条件に、判断まで任せる仕組みの作り方は仕組み化とはに書いています。

よくある質問

表記ゆれとは何ですか

同じ物を指しているのに、書く人や書く場所によって書き方や呼び名が違っていることです。送り仮名や全角・半角の違いのような文字の揺れと、同じ物を別の名前で呼ぶ呼び名の揺れがあります。

表記ゆれの例にはどんなものがありますか

文字の揺れでは「行う」と「行なう」、「サーバー」と「サーバ」、英数字の全角と半角などです。会社の中では、同じ講座の中身が書類によって別の呼び名になっている、社内の区分名がお客様の見る画面に出ている、といった呼び名の揺れが起こります。

表記ゆれの対策は何から始めればよいですか

文字の揺れは、どちらに揃えるかを決まりの紙に書き、校正の道具で機械的に揃えます。呼び名の揺れは、記録や集計に使う欄から先に、書いてよい語を決めて自由に書かせないようにします。

社内用語を統一するとき、どの呼び名に揃えればよいですか

今動いている物(実際に使われている画面や仕組み)の呼び名か、相手に見えている物として通じる呼び名に揃えます。運営会社では、契約書の中で揺れていた呼び名を会員サイトの呼び名に揃え、契約書は次の版で直すことにしました(株式会社命の判断の記録・社の実測 2026-10-24)。

一度決めた呼び名は、変えてはいけませんか

記録を数えるための名前は、変えると数えられなくなるので変えません。見せる名前やメニューの塊の名前は、中身と合わなければ決めた後でも替えます。運営会社でも、管理画面の塊の名前を「会員サイト」から「会員サービス」に替えています(株式会社命の判断の記録・社の実測 2026-10-25)。

出典

  • 株式会社命の規則の紙(判断の記録の「領域」の欄は 8 つの語だけ・自由記述にしない・判断の型の名前は一度決めたら変えない・社の実測 2026-10-27)
  • 株式会社命の判断の記録(契約書の中で 3 通りに揺れていた講座の中身の呼び名を、会員サイトの呼び名に揃え、契約書は次の版で直すことにした・社の実測 2026-10-24)
  • 株式会社命の判断の記録(会員に見える画面と公開の答え集に出ていた社内の区分名を、売っている段の名前に変え、会員へは完了の報告を返した・社の実測 2026-09-19)
  • 株式会社命の判断の記録(管理画面のメニューの塊の名前を「会員サイト」から「会員サービス」に替えた・社の実測 2026-10-25)
  • 株式会社命の判断の記録(資格の段の呼び名を数字の級から Associate/Professional/Master に替えた・社の実測 2026-10-09)